はじめまして
 
 そういって現れた人物に 私は恐怖を抱いた
 私はまだ幼くて 何故恐ろしかったのか 何が恐ろしかったのか 理解できなかった
 
 でも 今なら分かる

 彼に囚われてしまうのが 怖かったんだ
 自分を見失ってしまうほど 深く彼に囚われる事が


 やがて その恐怖は 狂おしいほどの愛へに変わった
 

 死、を求める人間を、引き留めるのは『善人』か
 生、を求める人間に、終わりを与えるのは『悪人』か

 それを決めるのは他人ではなく、自分である

 言葉の真実ほど
 人が定義づけることほど
 絶対と決定づけることが難しいものはない

 何故なら
 人は絶えず変化するものだから

 これも、必ずしも正しいとは限らないのだけれど
 一番好きな人
 好きすぎて、愛しすぎて
 苦しくなるほどの、愛

 それはわたしにとって凶器でした
 わたしを狂気へと誘う、凶器でした

 愛しすぎる人の傍にいる事は、本当は不幸なのかもしれません
 愛する人と離れることは、とても勇気がいるのです
 とても、心引き裂くほどの痛みが伴うのです
 けれど、愛する人のと共にいることは幸福と同等かそれ以上に悲しみの中に沈んでしまう原因を生みます
 辛くて辛くて、悲しくて
 胸がつぶれてしまうんじゃないかと思う程に
 心が悲鳴を上げるのです

狂おしいほど愛する人の側にいる事は
不幸なのでしょうか、幸福なのでしょうか


10/03/27 
10/06/28 一部修正
 今日わたしの最愛の人が旅立ちます。
 二度とわたしの許に戻ってくることはありません。
 彼は私のことを愛してくれていました。
 口下手な彼がしてくれる、精一杯の愛情表現がわたしにはとても愛しく、とても嬉しいものでした。
 でも、とても不安なのです。
 彼の気持ちを疑って、いつか憎んでしまうのではないのかと。
 彼は、旅立つまで一度も言ってくれなかったのです。

 何故、最後にわたしでなく、あの人といたのか。
 何故、最後までわたしに隠していたのか。
 なぜ?どうして?
 分からない、わたしは彼ではないのだから。

 最後にわたしに宛てられた手紙を、彼が旅立つ直前に受け取りました。
 きっと以前のわたしなら、この手紙を喜んで受け取り、浮かれていたでしょう。
 でも、今のわたしには疑惑の芽を育てる肥料にしかなりません。
 悲しみを育てる栄養にしかなりません。
 最後まで残酷なまでに、彼は彼でした。
 手紙には、やはり一言もなかったのです。
 わたしが今一番欲している言葉が。

愛の言葉なんてひとつもなかった

(わたしは貴方をあいしています)

title:確かに恋だった

2010/02/06
 もしかしたら、最後になるかもしれないから。
 そう言った彼女は今まで見てきた中で、一番美しかった。
 皮肉なことに。

 あの時、世界はひどく残酷で、2人を一緒の場所にとどめる方法を用意してはくれなかったんだ。
 彼女は遠くへ行かなくてはならなくて、僕はここに止まらなければならない。

 さようなら、愛しい人よ。
 言葉にしたことはついになかったが、いつまでも君に僕の最高の愛情をおくるよ。
 最後まで臆病な僕を、許してくれ。
 もう二度と会えないとしても、僕は君を想い続ける。
 少し胸が痛む思い出と共に、僕は君を想い続ける。

触れられなかったキスの味を、僕は生涯忘れない

(…と思ったんだけどなぁ)
(?何よ、いきなり)
(いや、なんでもない)

 一週間後、彼女は僕の花嫁になる。

title:確かに恋だった

2010/02/21

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