幼いころ、いつも一緒に遊んでいた。
ただ目の前にあるものだけを信じて歩いていたんだ。
君の周りはいつも輝いていて、近くにいるとその光を分けてもらえるような気がしていた。
けれど、その輝きは突然突き付けられた真実を前に、苦痛以外の何物でもなくなってしまった。
僕は君と約束をし、君のもとから離れて歩き出す。
いつか君を迎えに来る運命の中で、僕も一緒に進めるように。
たとえ君が僕を忘れてしまっても 君を守り続けるよ
昔の誓
憎らしかった。
彼女を優先する彼が。
そう思う自分が。
待ち望んだ人が帰ってきたことを知った彼は、一緒に居た私の存在を消し、全ての神経を待ち人へと向けた。
彼は私を愛していると言ってくれるが、それを疑ってしまうのは仕方がないと私は思う。
私を愛している言う彼
彼は何時もなら出し惜しみする力を発揮して彼女のもとへ向かう。
その姿に呆れながら私もゆっくりと立ち上がり、後に続いた。
本当なら彼女に対する彼の姿を直視したくないが、そうも言ってられない。
何故なら私は彼女に気に入られてしまったから。
そして慕ってくれる彼女を、私も好きであるから。
既に姿は見えないが聞こえる話し声に私は溜め息を吐く。また、暴走した彼を私が押さえなければならないと思うと憂鬱だ。
どうにかならないのか、あのシスコン野郎。
重度のシスコンである彼から私は奴の妹を引き剥がさなければならない。 その行為を妹が受け入れているなら良い…いや、良くないか。
兎に角、彼の行為は愛する妹にとっては大変迷惑なのだ。何よりもその表情が語っている。
だから、何だかんだと彼の行為から彼女を助け出している私のことを大層気に入ってくれたわけである。愛らしい小動物の様な彼女に慕われて嬉しくないなんてあり得ない。私も彼女を実の妹の様に可愛がりたい。だが、いかんせん兄が鬱陶しかった。
彼女が私のところに逃げ込むと怨めしそうに睨んでくる。過剰にかまうあんたが悪いと言っても聞く耳持たず。
何でこんな奴の相手をいているんだろう、と昔に思いを馳せていたら、女の子の悲鳴が聞こえ、我に帰った。
急いで向かうと見慣れた光景が飛び込んできた。やっぱり。ちょっと前の私と二人で居た時の姿とは、うって変わった姿がそこにはあった。
うん、私に対してあんな態度とってくれなくて良かった。
でもね。
次ぎやったら雛子ちゃんと二人だけで遊びに行ってやる!!
私を愛している言う彼は、実は唯のシスコン野郎
大事な人がいなくなる事が何時起きたって、心は追い付かない。
彼が言った言葉を思い出した。
今、この瞬間に思い出すなんて。
泣きそうになるのを必死に堪えた。
私の時は止まる
声が聞こえる 遠くの方で
初めて聞こえた声に 胸が騒いだ
走って、走って 声の方へ向かって行った
そこに1人の人がいた
声をかけようと口を開いた
だけど声を出そうと頑張っても
怖くて声が出せなかった
心が叫んでも、体が言うことを聞かない
届けたい心 阻む思い
彼に藤と呼ばれるのが嫌だった。
あの人と比べられているようで。
私は私。
だけどあの人の生まれ変わり。
分っている。
分っているけれど。
お願いだから、私を見て
嫌いな呼び名
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