透とミケ様のと穏やかな午後なあ、ミケ様。あんた、この前おうぎを修得したんだってな。由奈がはしゃいでたよ。 そうか。何やらわたしに向かって訴えておったので、あの娘の期待に応えてやっただけなのだが。彼女が喜んでくれたのなら、わたしも嬉しい。 はしゃぎ過ぎて周りが大変だったけどな。あいつが笑ってくれるだけで、俺たちの心は落ち着く。 わたし達がこんなに穏やかに過ごせるのも、あの娘のおかげだな。春の日差しのように暖かく包んでくれる。 たまに突風を巻き起こして、こちらに多大な被害をもたらすけどな。 言うほどそれを嫌がってはいないだろに。 さあ、どうだろう。 あまりそっけない態度をとると、彼女に飽きられるぞ。後で泣き言を言ってもわたしは助けないからな。 余計な御世話だ。それに、俺はあんたに泣き言を言った事も助けを求めた事も一度も無い。 確かに、お前が直接わたしに泣き言を行った事も、助けを求めた事も無いな。 何だよ、その言い方。 年寄りをあまり頼りにするなと言う事だ。この前あの娘が落ち込んでいた時、お前が使い物にならなかったからな。 うっ…その節はありがとうございました。 お前の為だけにした事じゃない。っと、あの娘が近づいて来た。今日はここまでだ。 そうか…それじゃ、また今度。次は旨い酒でも持ってくるよ。 期待してるぞ、透。 「透?そんな所で何をしているのですか?」 庭園の芝生の上へ直に座っている透を見つけた由奈は、彼に向って声をかけた。 その声に反応した透は、空に向けていた視線を由奈に定めた。 「天気が良いから、ミケ様と一緒に日向ぼっこしてたんだ」 「まあ!素敵ですね。わたくしもご一緒してもよろしいでしょうか?」 ぱあっと笑顔で顔を輝かせた由奈を見て、透は頬笑みを浮かべた。 「うん、おいで」 透は自分の隣りをぽんぽんと叩いて、座るように促す。 そこにすぽんっと納まった由奈は、暖かい日差しに包まれ自然と笑顔になった。 「ところで、透。ミケ様はどちらにいらっしゃるのでしょうか?」 一緒に日向ぼっこをしていたと言うのに、その姿が見えない事を疑問に感じた由奈が問いかける。 それに、透は苦笑しながら答えた。 「残念でした。由奈が来るちょっと前にふらっとどっかに行っちゃったんだ」 求めているものの行方を教えると、由奈は表情を曇らせた。 「それは残念です。ミケ様のお背中を撫でさせて頂きたかったのですが」 「また今度の機会にな」 透の言葉を聞いた由奈は、突然悲痛な表情をその顔に浮かべながらこう告げた。 「もしや、わたくしミケ様に失礼な事をしてしまったのでしょうか!?」 今までの会話の中からどうやったらそういう結論に達するのだろうか。 いきなりそんなことを口走った彼女に、透は驚く。 「なんでそういう考えに行き着くんだ?」 「わたくしがこちらに向かっているときに、ミケ様がどちらかへ行かれたという事は、わたくしの気配を察知されたミケ様がわたくしに会うまいとなされたのではないのでしょうか!!」 息継ぎをせずに一気に言い切った由奈。追い詰められたような表情を浮かべながら迫ってくる彼女に、透は後ずさる。 「いや、それは無いと思うぞ?」 「何故そう思うのでしょうか!!」 もう、彼女は必死である。 「あのな、気位の高いミケ様が気に食わない奴に御手なんかすると思うか?一応俺も気に入られているみたいだけど、あんな事をするのは由奈だけだぞ」 「そう、なのですか?」 「俺が嘘を言ったら由奈が傷つくって知ってるのに、そんな事するわけないだろ」 穏やかな声音で言う透にだんだんと由奈が落ち着いて行く。 「安心しましたぁ。ミケ様に嫌われていたらわたくし、どうしたら良いか」 由奈が涙目になっている事に気付いた透は、彼女に気付かれないようそっと息を深く吐いた。 |