いつのころかは忘れたけれど、私が幼い頃、家ではなく小さな病院みたいなところに住んでいました。
 そして、その一室にあるベットの上で私は一日中過ごしていました。
 そのころの私は体に悪いものを持っていて、普通の子供のように、外を駆け回ることが出来ず、ずっと飽きることなく、外を眺めておりました。

 ある日、いつもと変わらず空を見上げていたら、綺麗な鳥の人が私の部屋の前に降り立ちました。
 美しい翼に、赤茶の髪の男の人でした。
 全部美しい姿でしたが、その中で特に目を引いたのが翡翠の様な綺麗な緑の瞳の色でした。
 彼はじっと私を見つめていました。
 私は彼に見惚れて、何も言えなかったのですが、さすがに数十秒も時がたてば脳が正常に動き出すわけでして。
 私は無意識にベットから窓を開け、彼に話しかけました。
「あの、こんにちわ。今日は天気が良くて外は気持よさそうですね」
 私が話しかけると、彼は驚いたようで、大きく目を見開いた。
「お前、俺が見えるのか?」
 一瞬彼の言ったことが分かりませんでした。
「え?はい」
 私が彼の言葉が不思議で首を傾げているなか、彼は顎に手を当てて考えるふうな姿をとっていました。
「ふむ。特に見鬼の才が強いわけでもない。しかし…」
「あの、そんなところに座っていると疲れませんか?」
 彼は窓の近くにある細い枝の上に屈んでいます。
 あの格好で長い時間いると、足がしびれて後で切ないことになるのは以前経験した痛い思い出から想像できます。
 彼は私の言ったことに再び驚いたのか、また目を見開きました。
 それから少し笑い明けた窓から室内の私の前に降り立ちました。
 降り立つと、彼の羽はすっと消えてしまいました。
「あ…」
 美しい羽が消えてしまったことを少し寂しさく感じました。
「ん?どうした」
「いえ、何でもありません」
 軽く首を振って否定を示し、私は彼を見た時に心に浮かんだことを聞いてみようと口を開きました。
「あの、聞きしてもよろしいでしょうか」
「なんだ」
「あなたは私を迎えにきたのですか?」
 彼は静かな瞳で私を見つめ、私はそれを見つめ返します。
「何故、そう思う」
「だってあなたは人でないのでしょ?だってそんなに綺麗なのですから」
 無意識のうちに私は微笑んでいました。
「答えになっていない」
 少し間を開けて、私は口を開きます。
「なんとなく、そう思ったのです。自分でも何故だかわかりません…」
 いいえ、違います。私自身が一番よく知っているのです。何故なら。
「俺は、たまたまこの近くを通りかかっただけだ」
 聞こえて来た声に、いつの間にか下がっていた目線を上げます。

08/10/19 途中で力尽きた・・・。
09/ 改稿

Novel  /