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「明日で此処ともサヨナラだね」
 そう言いながら私は自販機で買ったパック飲料を飲んだ。
 彼はそうだなといいながら、茜色に染まった空を見上げる。
「で、いつなの?式は」
 ここでその話を切り出されると思わなかったのか、驚きを顔に張り付けた彼は私を見た。
「ほら、この前紹介してくれた彼が、教えてくれたんだ。彼女と結婚するんでしょ?」
 恥ずかしいのか、そっぽを向く彼は右耳の上を掻く。
 彼が照れたときにする、しぐさ。
「言うつもりだったよ。でも、お前忙しそうだし、言うタイミング逃してた」
「言ってくれればどんなことしてでも、予定空けたのに。大事な親友の結婚式だもの、呼んで貰えれば絶対に意地でも出席したよ」
 変に気を使われたことを非難すると、彼は溜息をついた。
「言えるか。ずっとお前が望んでた夢に手が届く直前に」
 その声音から、なんだか彼が寂しくなっていることを感じた。
 自分との別れを惜しんでくれているのだろう。
 自分が彼の中で大事にされている証拠だと思うと嬉しく思う。
「それこそ余計な御世話!私の気持ちはどうなるのよ。何にも話し聞いてなかったから、彼から話聞いたときはショックだったわ」
 ガックリ肩を落とすと、彼は申し訳なさそうに謝ってきた。
「ただでは許してあげないよ。今度夕飯奢ってね〜。あ、もちろん彼女も一緒に。あーあ、彼女が人妻になるなんて。しかも貴方の奥さんになるなんて羨ましいわ。あんなに素敵な人の伴侶になれるなんて本当に貴方は幸せ者ね」
 笑って言うと、なぜか彼は悲しそうな顔をしていた。
「ああ、俺は幸せ者だ。こんなひどい男を彼女は選んでくれた」
 その言葉に首を傾げると、彼は何でもないと手を振ってそれ以上の問いを拒否した。
「それより、お前はどうなんだ?あの許嫁とは上手くいってんのか?」
 彼の言葉に伝えなければならない事柄を思い出す。
「ああ、そうそう。それで貴方に一つ報告。私もあっちで落ち着いてから結婚式するんで、絶対出席するように!」
「決定事項かよ」
「当たり前よ!!」
 元気に返すと、彼は苦笑してしょうがないと呟いた。
「本当は式なんてしなくても良いんだけどな、明日には籍入れるし。でも、そうも言ってられないし。」
 不満たらたらの声で言ったから、彼からいつものように叱られると思っていた。
 しかし、いつもならすぐに帰ってくる対応に間があった為、不思議に思い彼を見る。すると驚きの表情で固まっていた。
「どうしたの?」
「お前・・・明日籍、入れるのか?」
 歯切れの悪い彼の態度を不思議に思いながら、肯く。
「うん。出国する前に、先に籍を入れてしまおうってあの人が」
 答えると、彼はそうかと呟いて俯いてしまった。
「先を越されて悔しいですか〜?残念、私の方が先に結婚しちゃいます」
 ニヤニヤ笑いながら言うと、彼がバカたれと頭を来ずいてきた。
 それを皮切りに、じゃれあう。
 ほどなくして、彼の携帯に一通のメールが届き、2人でその場を離れた。


 数ヵ月後、私は小さい頃からの最愛の人と結婚式を挙げた。
 親しい人たちだけで行われたそれに、彼は「おめでとう」と書かれたカードを添えた花束を送ってきてただけで、出席してはくれなかった。
 その理由を、私は後に彼の妻となった彼女から明かされる。
 胸を切り裂かれる様な、真実を。


誰にも知られずにこの恋が終わっていく


(いや、本当はとっくの昔に終わってたんだ。将来の相手のことを聞いたときから。あいつの思いを知ったときから。ただ、俺が未練たらしくいつまでも引きずっていただけなんだ。)



2010/02/21

title:確かに恋だった

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