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「今日、結婚式に行ってきた」
 部屋に無断で入って来た彼は、そう言いながら窮屈なのだろうネクタイを解いた。
「へぇ、それはお疲れ様」
 彼女は、読んでいる雑誌から目線を外さずに応える。
「ホントは、行く気無かったんだけどな。あいつがどうしてもって言うし、親もうるさいし」
「ほぅ」
 彼女が上の空でしか返事をしないのを承知で、彼は続ける。
「いつかはこんな日が来ると、分かってはいたが、実際来てみるとしんどいな」
 苦笑しながらいう彼の顔には、悲しみが浮かんでいた。
「正直、出席するって決めた後も、逃げ出したくて仕方なかった。でも、逃げ出すほどの勇気が俺には無かった」
 彼がそういうと、彼女はやっと雑誌から手を離し寝転んでいた体を起こした。
 そのまま立ち上がり、台所にある冷蔵庫からペットボトルを2本取り出す。
 1本を彼に渡して、再び雑誌に視線を落とす。
「少しは労わりの言葉をかけたりしないのか?」
 真剣に聞いてくれる相手がいないのに喋り続ける、という行為が空しくなったのか、彼は彼女に問いかける。
「慰めの言葉がほしいなら、言うけど。…欲しいの?」
 雑誌から視線を外して聞いてくる彼女の言葉に、彼は沈黙した。
 ほらね、と言わんばかりに彼女は再度雑誌に視線を定め、ページを捲る。
「俺、どうしてあいつを好きになったんだろ。一人の女性として愛したんだろ」
「さあ、私には答えられない。…にしてもクサイセリフ」
 彼女の答えに、彼は笑った。
「ホントにな」
 どちらの事を肯定したのか、それとも両方なのかは彼女には分からない。ただ、帰って来た時よりは普段の彼に近づいたと、彼女は思った。
「なんか、やっと俺の初恋が終わったって感じがする」
 その言葉に、彼女は反応した。
「あの人、貴方の初恋だったの?」
「あれ、言ってなかったっけ」
 彼女は不満げな、悲しそうな顔をした。
「貴方といい、私といい、本当に起こると、あの言葉が真実だと思えてくる」
 彼女の言葉に彼の表情が無くなる。
「だな。あれを聞いたとき、本気でその言葉を教えてきたあいつが憎かった。ま、若いころの話だが」
 先程の表情を変え、再び苦笑する。
 しかし、彼女は痛いところを突いてきた。
「うそ、今でも憎いくせに」
 今度は彼女が、どっちが憎いのかむしろ両方なのか、肯定しにくい言葉を返してきた。
 あえて彼は返事をせず、彼女が持ってきてくれたペットボトルを開ける。出そうになった言葉と共に、中の液体を体内に流し込んだ。


初恋は実らない、ジンクスさえも憎い




2010/02/07

title:確かに恋だった

  /  Novel