「月が満ち、女神の息吹が内へ吹き込まれる」

 月明かりに照らされたバルコニーに男が一人、立っている。
 彼はじっと月を見上げてはいるが、その瞳はどこか虚ろだ。

「ここにいらしたのですか。捜しました」

 男の背後から声がした。

「お前か、何のようだ」

 男はそちらの方を振り返らない。

「女神の封印の開放が始まりました。力が表れるのも、時間の問題かと」

「そうか。ついに彼女が目覚めるのか」



 男は目を閉じ、愛しそうに、心の底から嬉しそうに

 美しく笑った



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